各種哺乳類の体重と寿命の関係は正の相関、つまり大型動物ほど長生きですが、人間はその相関からはずれ、体重の割りに飛びぬけて長寿です。これには色々な理由が考えられますが、主要な理由のひとつに、人間は歳をとっても好奇心が旺盛である事が挙げられます。この好奇心とは、対象物(対照人物)に対するトキメキ反応であるともいえます。
言い換えれば、トキメキは、健康、長寿、若さ、美しさの源であるといっても過言ではありません。
世の中で好奇心の塊のようなヒトといえば、科学者や芸術家の幾人かが思い起こされますが、例えばピカソは91歳、ニュートンは81歳、ダリは84歳、ファーブルは91歳・・・と長生きで現役時代が長いのです。
ヒトの近縁種であるゴリラやチンパンジーなどは老成が早く、好奇心の強い幼児期を過ぎ青年期になると、最早人生を達観した風情になり落ち着き払ってしまいます。
人間の場合でも変化が見られます。昭和30年代、高度成長期前までは60歳といえば立派な年寄り、隠居でラジオで演芸独演会などを聞きながら、キセルでタバコを吸っていたものですが、近頃の60歳は「ちょっとシルクロードへ行ってきます」などと、まだまだ好奇心の塊で、ちょっと見も若々しくはつらつとしているのです。
このシステムを体内で保つ事は、とりもなおさず幸せな人生に直結します。従って、トキメキをいつも呼び起こす事ができるように心身を鍛える事が大切なのです。
トキメキは交感神経の軽い興奮によってもたらされます。物質でいうとカテコールアミン代謝系の亢進で、特にドーパミンの作用に負うところが大きいのです。しかし、ただ交感神経を興奮させればいいというわけではありません。
例えば目の前に虎が出てきて絶体絶命の時にも交感神経は充分興奮しますが、トキメキとはほど遠いものです。つまり、脳の作用部位が異なり、関連して分泌される脳内物質も異なるのです。
トキメキを脳内で作動させるもうひとつの物質は、モノアミン類のフェネチルアミンという化合物です。脳内恋愛物質とも称され、恋愛感情が高まった時期には尿中への排泄も増えます。
このようなトキメキの感情の発生するベースには、リラックス状態つまり副交感神経の亢進があり、心身に余裕のある体制にあるときに、軽い交感神経の興奮が情動のレベルで発生する、これがトキメキです。
結局どれだけリラックス状態に自分を持ってゆけるかがトキメキを起しやすい、幸せ体質になれるかどうかの第一のポイントなのです。
英語ではトキメキは“Beat fast”つまり胸のドキドキです。
私共では、14~16世紀にメキシコを中心として栄えたアステカ文明において、トキメキを起させる目的に使われたと思われるカカオの成分を抽出して摂取すると、摂取30~45分後に少しの脈拍の上昇が起こる事を見つけ、これをカカオトキメキサブスタンスと名づけました。しかし、脈拍の上昇は起こるものの、血圧の上昇は認められませんでした。このあたりがトキメキの玄妙なところではないかと考えております。
カカオのほかにも日本を始め世界中の伝統食品の中に、トキメキを誘引するものが種々存在する事を想定し、現在色々な食品の生理活性成分の解析を行っております。
今、到来しつつある高齢化社会が問題視されておりますが、物理的には高齢者でも生物的には活性の高い現役人間であれば、社会生活上のバランスシートも決してマイナスにはならないものと思われます。
私共は、食品のトキメキ作用を更に研究し、活力にあふれた高・壮年作りに寄与する食品、食材を提案してゆきたいと考えております。